月別: 2018年3月

海の巾着袋、三段活用

写真の生き物、なんだかお分かりでしょうか?イソギンチャク?サンゴ?正解は…「スナギンチャク」です。真鶴の海中でもよく見かけるのですが、いわゆる「背景」になってしまう生き物ですね。このスナギンチャク、名前から想像できる通り、イソギンチャクに近い生物です。どちらも体は袋のような単純なつくりで、消化管や肛門はなく、出入り口は口だけ。シンプルですね。スナギンチャクは、いくつかの個体がくっついて群体を作っています。密集していても一匹一匹が独立しているイソギンチャクとはちょっと違いますね。また、体に砂を取り込む性質があり、イソギンチャクに比べるとザラザラした触り心地です。といっても、イソギンチャク、スナギンチャクともに、触手にはミクロの毒針が並んでいるので、むやみに触るのは避けたほうが無難でしょう。

スナギンチャク(撮影地:真鶴 岩)
ウメボシイソギンチャク(撮影地:真鶴 三ツ石海岸)

スナギンチャクに続いて、こちらは「ハナギンチャク」。美しいですね。ハナギンチャクは群体にならない独立型です。大きな特徴は自分の粘液で棲管(せいかん)を作ること。イソギンチャクは足の吸盤で岩などにくっついていますが、ハナギンチャクは砂地でマイホーム=棲管を作って暮らしており、ビックリさせると棲管にひっこんでしまいます。

ハナギンチャク(撮影地:沖縄)

イソギンチャク、スナギンチャク、ハナギンチャク。海にはいろいろな巾着がありますね。生物分類学では、この3つはそれぞれ目(もく)に該当します。哺乳類で例えてみれば、サル、ネコ、ウシというレベルで異なることになります。ちなみに、サンゴ礁を作るイシサンゴも、この巾着一味に近い動物です。

スナギンチャクにハナギンチャク。耳慣れない名前の通り、人間生活には関わりが薄い生物で、研究も十分に進んでいません。しかし、あなどるなかれ。近年、スナギンチャクからは骨粗鬆症に効果が期待されている物質が発見されているのです。海の巾着一味が人類を救う日が来るのかも?調べがいのある生物と言えるでしょう。

「写真展 知られざる真鶴の海」開催中!

ブログでの報告が遅くなりましたが、現在、貝博では「写真展 知られざる真鶴の海」を開催しています。
真鶴は海の町。海辺には多くの人が訪れます。太陽を浴びてキラキラ輝く海は、誰でも見とれてしまう美しさです。さて、みなさんは、その海面の下、海中にどんな光景が広がっているかご存知ですか?そこには無数の生き物が暮らす青い世界があるのです。というわけで、この写真展では、真鶴の海の中に広がる魅惑の世界を、ダイバーによる水中写真で紹介しています。写真の被写体をちょこっとだけ紹介しますと…金色の海藻の林、ブリの群れ、漁礁を彩るソフトコーラル、巨大なマンボウ、青に溶け込むダイバーの姿…などなど。この全てが真鶴の海で撮影されたということに、誰もがビックリするはずです。真鶴の新たな一面にきっと気づかされることでしょう。ぜひご来場ください。展示期間は5月のゴールデンウィーク明けまでです。

写真展で使用している写真は、「真鶴の海の魅力を広く伝える」という趣旨に賛同してくださったダイバーの方々から、無償で提供いただいています。60名もの方が協力くださいました。心より感謝いたします。
写真は準備を手伝ってくださったサポーターズの方々です。いつもありがとうございます!