カテゴリー: 真鶴の自然

海の巾着袋、三段活用

写真の生き物、なんだかお分かりでしょうか?イソギンチャク?サンゴ?正解は…「スナギンチャク」です。真鶴の海中でもよく見かけるのですが、いわゆる「背景」になってしまう生き物ですね。このスナギンチャク、名前から想像できる通り、イソギンチャクに近い生物です。どちらも体は袋のような単純なつくりで、消化管や肛門はなく、出入り口は口だけ。シンプルですね。スナギンチャクは、いくつかの個体がくっついて群体を作っています。密集していても一匹一匹が独立しているイソギンチャクとはちょっと違いますね。また、体に砂を取り込む性質があり、イソギンチャクに比べるとザラザラした触り心地です。といっても、イソギンチャク、スナギンチャクともに、触手にはミクロの毒針が並んでいるので、むやみに触るのは避けたほうが無難でしょう。

スナギンチャク(撮影地:真鶴 岩)
ウメボシイソギンチャク(撮影地:真鶴 三ツ石海岸)

スナギンチャクに続いて、こちらは「ハナギンチャク」。美しいですね。ハナギンチャクは群体にならない独立型です。大きな特徴は自分の粘液で棲管(せいかん)を作ること。イソギンチャクは足の吸盤で岩などにくっついていますが、ハナギンチャクは砂地でマイホーム=棲管を作って暮らしており、ビックリさせると棲管にひっこんでしまいます。

ハナギンチャク(撮影地:沖縄)

イソギンチャク、スナギンチャク、ハナギンチャク。海にはいろいろな巾着がありますね。生物分類学では、この3つはそれぞれ目(もく)に該当します。哺乳類で例えてみれば、サル、ネコ、ウシというレベルで異なることになります。ちなみに、サンゴ礁を作るイシサンゴも、この巾着一味に近い動物です。

スナギンチャクにハナギンチャク。耳慣れない名前の通り、人間生活には関わりが薄い生物で、研究も十分に進んでいません。しかし、あなどるなかれ。近年、スナギンチャクからは骨粗鬆症に効果が期待されている物質が発見されているのです。海の巾着一味が人類を救う日が来るのかも?調べがいのある生物と言えるでしょう。

お林を歩く

先週末の土日は冬のお林を満喫してきました。「お林」は、真鶴半島の先端を覆うこんもりとした森のことで、古くから「魚付き林」として地域の人たちに大事にされています。お林は人工的に作られた森ですが、その歴史は江戸時代初期にまでさかのぼります。そのころに植えられたクロマツは樹齢300年を超える今でも健在で、後から植えられたクスノキ、自然分布のスダジイと合わせて、お林を代表する樹木御三家となっています。

土曜日は自然こどもクラブで子供たちと散策してきました。手を広げてクスノキの直径を測ったり、ドングリを探したり、一緒になって楽しみました。一生懸命キノコを探していたけど、見つかったかな?お林を抜けたら、今度は番場浦の採石場探検。昔はこんなところから人力で石を切り出していたんですね。貝博に戻る頃にはさすがにおつかれかな?と思っていましたが、みんな驚きの集中力で課題シートに取り組んでくれました。

博物館でのまとめのようす。

日曜は専門の研究者を招いて海のミュージアムでした(今回は「海」ではありませんが)。お林を歩きながら、この時期に見られる植物の特徴や、森林の遷移、植物には菌類との共生など、大変勉強になるお話を聞かせていただきました。地衣類やカメムシに異常な興味を示す参加者がいたり、ハランの根元に実を見つけたり、手を広げてクスノキの直径を測ったり…あれ、昨日もこの光景を見たような?みなさんすっかり童心に戻ってましたね。

 

ハランの実

貝博に戻ってからは本日のまとめ。参加者それぞれが、心に残ったこと、人に教えたくなったことなど意見を出し合い、地図に並べていきます。お林みどころマップの作成です。できあがったマップは近日中に貝博のエントランスホールに展示いたしますので、これからお林を歩かれる方はぜひ参考にしてください。